今作の開発とゲームデザインを担当した、
(株)シンク・アンド・フィールの
山木さんと藤本さんへのインタビュー。最終回です。
――
では、今回の『ブラッド オブ バハムート』の
開発に関して伺っていきたいのですけど。
山木
はい。
――
今回は、まずスクウェア・エニックス側から
どういうゲームにしたい、というオーダーをして
シンクさんで検討して提案していただく……
という流れを繰り返して開発を進めていきましたが、
その中で特に気をつけたことなどは、ありますか?
山木
そうですね……。
今回、色々と検討を重ねていった結果、
「巨獣と戦うゲームにしよう」という
コンセプトになったじゃないですか。
――
そうですね。
それを大前提としました。
山木
それで最初に思ったのは、
ニンテンドーDSで「巨大なものと戦っている感じ」というのは
本当に表現できるのか? というのがありました。
結局、こぢんまりしたものにならないか、と。
――
そこが命題でしたね。
山木
やっぱり、遠くからプチプチ撃ってるだけじゃ
巨大なものと戯れている感じは出ないので、
どんな形でもいいから絶対に、
「巨獣には乗り込むようなシチューションは
入れよう」と考えました。
――
なるほど。
山木
で、ニンテンドーDSでどうやったら表現できるかを考えて、
今のように、巨獣の特定のアクションに対して
こちらからアプローチできるようにする、という
流れになりました。
藤本
あとはインターフェイスですね。
照準を合わせてボタンを押す、という
操作ではなく、直接タッチするという
ニンテンドーDSならではの操作方法にこだわりました。
――
とにかくダイレクトに巨獣と
接している感じを出したわけですね。
で、その2点を軸に設計していって、
今回のゲームシステムが生まれたと。
藤本
実際の開発では、巨獣と戦うゲームなので
単純に「巨獣を表示する」という
ところから作っていきました。
――
そもそもニンテンドーDSの能力で
どこまで巨獣を表現できるのかを、
最初に探ろうと。
山木
そうですね。
――
だいぶギリギリのところを
攻めていきましたよね、今回。
藤本
もう、これ以上のことは
できないくらいのところまで攻めています。
山木
それと、今回は「奥行き」のある画面じゃないですか。
俯瞰じゃなくて。
――
はい。ほぼ真横からのカメラアングルなので、
巨獣が遠くに見える場合もありますよね。
山木
そこで遠近感の表現として、
巨獣が遠くにいるときは
霞んで見えるようにしましたが、
そういうこともなかなか
素直には表現できなくて。
巨獣が遠くにいると淡くなります。
藤本
どうやって表現しようかと、
わりと序盤から、プログラマーと
試行錯誤を繰り返しました。
――
何気ない部分ですが、要注目ですね。
――
巨獣の特徴についてはどうでしたか?
山木
スクウェア・エニックスさんから上げていただいた
巨獣のアートをベースに、
この巨獣はどういう攻撃をしてくるか、とか
どこが弱点で、どこをどのように
壊せるようにするのか、とかを考えて。
藤本
ここ壊せるよなー、とか。
ここ乗れそうだなー、とか(笑)。
横山
僕が言うのもなんですが、
かなりムチャ振りもあったと思いますけど(笑)。
山木
まあ、でも、デザインから、
かなりバラエティに富んでいたので。
藤本
それと、こちらからの提案で
巨獣のデザインを直してもらったり、
「それならこれはどうでしょう」と
再提案してもらえたことで
より良いものになりました。
――
そうですね。
で、実際に巨獣が動くようになって
ゲームとしてのバランス調整もしていくわけですが、
その辺の作業はどのように進めたんでしょうか。
藤本
バランス調整に関しては、
数字も含めてシステマチックに
決めていきました。
もちろん、細かい調整もしますが
全体としての割り振りはすべて
計算で埋めていきました。
――
なるほど。この時点で、ここの部位は
何回攻撃すれば壊せるように……といった感じで?
藤本
そうですね。
で、実際プレイして計算通りじゃなかったら
調整して……という作り方をしました。
横山
こっちでテストプレイして、
レベルいくつでクリアしたとかレポートを送ると
「想定通りです」って返事が来たもんね。
――
そんなこともあって、開発中はシンクさんでも
ものすごくテストプレイをしているのかなと
感じたんですけど、実際どんな体制でやってたんですか?
山木
そこはもう、開発全員でやってました。
手が空いた人から随時(笑)。
藤本
今回はマルチプレイなので、
みんなでワイワイやってた感じはします(笑)。
雰囲気は良かったですね。
山木
ただ、今回はボリュームがあるので、
全キャラ全ミッションクリアまでやると
ちょっとやっただけじゃ確認できない量だったんで。
最後はひたすらプレイし続けた感じです。
――
バランスは、想定通りに収まった感じですか?
藤本
そうですね。
完全なアクションゲームではなくPRG寄りなので、
与えるダメージや受けるダメージも
ある程度想定できますので。
――
なるほど。最初からそこまで計算しているので
大きくバランスが崩れていることもないと。
山木
あ、でも……欲しい素材、出ないんですよ(笑)。
一同
(笑)
藤本
おかしいですよね。
それは確かに「確率って恐ろしいな」と
思うところですけど。
――
ちゃんと乱数なんですよね?
藤本
乱数です。いじってません。
でも50%の確率なのに、20人くらいでやってると
1人くらい「どうしても出ない」って人がいて。
そこはちょっと予想外と言うか。
――
乱数の使い方の難しいところでもあり、
面白いところですね。
開発者が思ってもない結果になったりしますから。
――
では最後に、今後チャレンジしたいことを
お聞かせください。
まずは、藤本さんから。
藤本
やっぱり、「続けていくこと」ですね。
ゲーム業界で、プランナーとして。
管理職とかプロデューサーといった道に
進む流れもあると思いますけど、
やはり"モノ"を創るということを。
――
もともと、そこから端を発してますからね。
藤本
それを続けるというのも
ひとつのチャレンジかな、と。
――
なるほど。
山木
私は……いち企画に戻りたいです(笑)。
一同
(笑)
――
あ、いや、確かに、管理職になっても
現場でモノを創りたいと思ってる人も
多いみたいですからね。
山木
こねこね創る楽しさというのは
やっぱりありますし、
未だに捨てがたいというか……
この立場になっても魅力のあることですよね。
開発現場で、みんなで作ってるのを見てると
「俺もやりたいなあ……」と(笑)。
――
あ、こっそり羨んでたんですね(笑)。
横山
では、山木さんがチャレンジしたいことは
社長業をやりながらも、モノを創っていきたい、と。
山木
そうですねー。
もう一度ガッツリ入って、
モノ創りをやりたいなあ、と。
誰か社長を見つけてきて(笑)。
一同
(爆笑)
横山
いや普通、社長だったら、
チャレンジしたいことを聞いたら
「会社を大きくしたい」とか言うところなのに、
「企画に戻りたい」って!(笑)
山木
だははは!(笑)
横山
なかなか斬新な会社ですよ!?(笑)
藤本
いいんですか、それで?(笑)
――
まあ、そんな社風ってことですよね。
横山
このブログを見たゲーム業界志望者も、
「いい職場だ」と思うかもしれませんね。
有り体の堅苦しいことを言われるよりは
よっぽど魅力的だと思いますよ。
――
そうですね、本音を言える
オープンな環境だということは
よく伝わるんじゃないかと。
自由な発想は、こういうところから
生まれるのかもしれないですね。
今日はありがとうございました。
明日は、巨獣攻略ガイドの「フェンリル」編!
銀狼の巨獣にはどう立ち向かえばいいのでしょうか。