「ブラッド オブ バハムート」の開発スタッフ
(共同ディレクター・石山貴也)による
ゲーム解説やスタッフインタビューを
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今作のアートディレクター、
松田俊孝インタビューの第3回です。


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■シヴァに都市を築くには


――
では、実際に
最初に紹介したシヴァのイラストが
どのような手順で
描かれていったのかを
お伺いしたいのですけど。


松田
はい。


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――
まず、どういう発想が
あったんでしょうか。


松田
ま、シヴァに限った
話じゃないんですけど、
今回は「都市が乗ってるクリーチャー」
といった縛りがあったので、
都市の巨大さを伝えるために
ヒューマンスケールのものを
持ってこなくちゃいけない、
というのがビジュアル的に
必須だったんです。


――
比較できるものが描かれていないと
巨獣の大きさが伝わらない、
ということですね。


松田
そうです、そうです。
で、ニンテンドーDSというハードの
(画面領域や解像度といった)特性もあるので、
基本的に建築系のものを
必ず身体のどこかに足すようにして。


――
はい、はい。


松田
で、実はそれで
いちばん苦慮したのが
この「シヴァ」なんです。


――
あー、そうですよね。
まあ、人型……というか
もう"人"ですからね。


松田
しかも、巨獣の紅一点という
位置づけにしてたので、
やはり身体に建築を
刻むわけにはいかない!と(笑)。


――
人間ぽければぽいほど、
なんだかグロいぞ、と(笑)。


松田
わりと最初の段階から、
どうしたものかと悩んでました。


――
で、最終的に、この
フロートと呼ばれる台座に
その要素を。


松田
押しつけて。
あ、押しつけてと言うか(笑)、
そっちに建築要素をもってきて。
しかもフロートに乗っている姿なら
優雅さも出せるし、
女性らしいと。


――
その解決策を
思いついたときは、もう
きたー! これだー!! と(笑)。


松田
そうですね。
まあ、ホッとしたというか。
なんとかしなきゃいけないと
いうところで、
あ、これだ!と(笑)。


――
なるほど。


松田
ただ、それでも
シヴァだけ何もないというのは
ちょっとイヤだったんで、
こっそり頭の上に王宮を建てて
王族はそこに住んでいる
という設定にしてます。
王族は船酔いが半端ないでしょうね(笑)。


――
まあ、住んでる間は
巨獣は動きませんから(笑)。


■初期デザインのシヴァは


――
雑誌などで公開されているイラストでは
腰を下ろしてますけど、
最初にデザインした絵では
横たわったポーズでしたよね。


松田
そうですね。


横山
うわー。
すごいっすねー、これ!(笑)


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――
うわー(笑)。
今のに見慣れちゃってましたけど
最初のってこんな
ムッチムチだったんですね。


横山
今のは、顔もシュッとして
幼い感じだね。
ある意味、ユーザーにとっては
前のが良かった的な
話もあるかもわかんないね(笑)。


松田
(笑)。


――
最初は、髪も
ロングヘアーだったんですよね。


松田
そうですね。
お色気担当なので
セクシー路線で考えてましたが、
ゲームの進行上、ロングヘアーだと
後ろからの攻撃ができないと
いうことになって。
で、髪の毛をチョキチョキと切って、
ショートカットに。


――
背中や首裏が見えるように
していただきました。


松田
最初言われたときは、正直、
イメージがガラッと変わるんで
イヤだったんです。


――
あー。


松田
でも、鳥山さん(*)からも
ショートカットのシヴァは
今までいないから、と。


(*)鳥山求。今作のディレクター。


――
そうですね。
過去の召喚獣のシヴァは
みんなロングです。


松田
だったら、もう、
ショートカットを逆手に取って、
ボーイッシュなシヴァにしちゃえ、と
気持ちを切り替えて
デザインしました。


――
そこで、スタイルも
ちょっと変わったんですね。


松田
そうですね、スレンダーに。
ただ、まあ、胸はちょっと
大きいんですけど(笑)、
基本、凛々しい感じの美女に。


■シヴァはアルカイック・スマイル


松田
あと、シヴァを描くにあたって
「アルカイック・スマイル」を
意識しました。


横山
あー、はいはい。


――
……あの、すみません。
ふたりで当たり前のように
話してらっしゃいますけど、
「アルカイック・スマイル」って……?


松田
まあ、ちょっと……
「妖しい微笑み」と言うか。
モナ・リザもそうなんですけど
意味深な笑い方、というか。


(※注)アルカイック・スマイル【archaic smile】
古拙の微笑。ギリシア初期の人物彫刻の口辺に見られる微笑を指す。中国の六朝時代や日本の飛鳥時代の仏像にもいう。(広辞苑第五版より)


――
そういう、「表情」のことですか?


横山
そうそう。


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松田
女性系を描くとき、
微笑ませるのは、やっぱ、
そういうのを意識しますね。


――
なるほど。
神々しいというか。
神聖な感じにもなりそうですね。


松田
あのシヴァの絵に限って言うと
表情は苦労した部分で。
最終的なクオリティが
どうかというのは抜きにしても、
(描くのにかかった)
全部の時間を10とすると、
顔だけで……7くらい
かかってるんですよ。


――
おおおー。
女性の顔には、そのくらい
力をかけていると。



続きます。
明日で、アートディレクター編も最終回です。
実際の作画手順の紹介と、
今後チャレンジしたいことを伺います。

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