今作のディレクター&シナリオライター
鳥山へのインタビュー、第3回です。
――
では、実際のストーリー制作手法として、
今回の『ブラッド オブ バハムート』の
シナリオが、どういう発想の中で
生まれていったのかを
紹介したいのですけど……。
鳥山
まあ、最近だと
ストーリーに限らず、ゲームは
強い「コンセプト」を立てて
作っていくんで。
――
はい。
鳥山
『ブラッド オブ バハムート』の場合は
「巨獣と戦う」ということはもちろんですが、
実はストーリー的には
「現実世界の人物をモチーフに」という
コンセプトを決めていました。
横山
おお、「現実世界の人物」とは?
鳥山
歴史上に生きた生身の人間を
巨獣の住むファンタジー世界の住人として
登場させるというコンセプトで、
今回は「新選組」にスポットを当てました。
――
最初に、絶対に覆さないコンセプトを
決めたわけですね。
で、そこから膨らませていくと。
鳥山
そうですね。
――
新選組をモチーフにして
設定が組み立てられていったことは
「カモ」の名前にも残っていたりしますが、
それは、どのように消化されたんでしょうか。
ファンタジーでありながらも
ちょっと和風のテイストも入れつつ、
という感じに?
鳥山
そうですね。世界観的には和風のテイストと、
あとは「新選組」の生き様の部分を
どう切り出すか、で。
新選組の「誰もやろうとしないことを
本気で信じてる男たち」という
コアな部分をモチーフにしようと。
――
がむしゃらに「志」を貫く生き様、ですね。
鳥山
それで、「巨獣と戦う」というところにも
すべて結びつけていきました。
――
こうして、
「誰も挑もうとしない
巨獣との無謀な戦いに挑む男たち」
というキャラクターが
生まれていったわけですね。
細かい話ですが、
今作ではそういった流れもあって
「ミッションを受ける」ではなく
「ミッションに挑む」という
言い方をしていたりします。
――
それから、
ストーリーの結末まで書かれた
「プロット」の作成をするわけですが、
今回の場合、プロット執筆の段階で
物語はどんな感じで頭の中に
イメージされていたんでしょうか?
どんな展開にしていくかは
最初から決まっていましたか?
鳥山
『ブラッド オブ バハムート』の場合だと、
物語の結末は始まる頃からイメージできてましたね。
――
自分自身、実際書いてみたら
イメージと違うものになることも
よくあるんですが、
そこはどうなのかな、と
思ったんですけど。
鳥山
でも結末が決まっていても、
その過程は書きながら考えることが
多いですね。
――
なるほど。
書きながら、ストーリー展開は
どのように組み立てられたのでしょうか?
鳥山
僕は、映像先行で考えてて。
ビジュアルがまず浮かぶんです。
――
はい、はい。
こういうシーンを出したい、
というのが、画として。
鳥山
「惹き」となるビジュアルがあって。
それがイコール世界観でもあるんですけど、
それをきっかけに
ストーリーを作っていきます。
――
映像先行なんですね。
鳥山
まだ自分自身の経験が浅いときは、
そのまま書き始めちゃって
収集つかなくなることも
ありましたけど(笑)。
今はもうそれはなくて。
――
今回もそのように進めたと。
「見せ場」を始めに
キッチリ作っておいて。
鳥山
作っておいて。
そのキーになるシーンが
物語のどのタイミングで
入ってくるのか、とか。
さらに言えば、
大きい「コンセプト」として
ブレない流れがキチンとあれば。
――
物語ができあがるわけですね。
鳥山
『ブラッド オブ バハムート』は
非常に強いコンセプトとテーマが
最初から確立できていたんで、
とてもスムーズにいったと思います。
――
今回の「見せ場」というと、
やはり、それぞれのキャラクターを
見せるところですか?
鳥山
そうですね。
まあ、イブキたちのストーリーライン
というのがまずあって。
――
はい。中心に。
鳥山
そこに対して、
イブキたちに賛同してくる仲間たちが、
それぞれの思い入れのある巨獣を
倒すことによって、
より強く結びついていく、という。
――
そこをポイントとして
構成されたんですね。
鳥山
「男たちの熱いドラマ」という意味では
シンプルで非常に強いストーリーが
できていると思います。
続きます。
明日は最終回。
今回チャレンジしたことや
今後やりたいことについて伺います。